「ねずみ捕り」と呼ばれる籠型の罠があった。
当時の飼い猫は,実際にねずみを捕っていた。
猫が通り過ぎたあとには,たいていねずみの死骸があった。
家の中には,猫が捕るだけでは追いつかないほどのねずみが棲息していたのだろう。
天井裏や物置の隅に,餌を吊るした籠のようなものを仕掛けてねずみが入るのを待つのである。
籠に入ったねずみが餌を触れば籠の入り口の蓋が閉まるという単純な罠なのであるが,昔はこんなもので実際にねずみが捕れていた。
ねずみが捕れると大人たちは容赦なく,ねずみを籠ごと水に浸けた。
採ったねずみを溺死させるのだ。
水に浸かった籠の中でもがきながら徐々に動かなくなるねずみを見ながら悲しい気持ちになったものだ。
ねずみが天井裏を走る音を聞かなくなって久しい。
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