昭和40年代,電話ボックスは現在のように全面が透明なものではなかった。
「かぐや姫」というフォークグループに「赤ちょうちん」という曲がある。
70年代「四畳半フォーク」の名曲である。
その歌詞の中に,
貴方と別れた雨の夜 公衆電話の箱の中 膝を抱えて泣きました…
という一節があるのだが,この部分を聴く時に現在の全面が透明の電話ボックスをイメージしては駄目なのである。
それだと,膝を抱えて泣いている女性の姿は外から丸見えで実に滑稽なものとなってしまうのだ。
膝を抱えるようにしゃがんだ状態で身体を電話ボックスの下半分に隠して泣いたからこそ,そこに女心の哀しみが感じられるのである。
懐かしい曲の中には現在のイメージで聴いてしまうと大きな誤解を生じるものが含まれているので注意したい。