第4歌集『水銀傳説』
昭和36年2月20日(白玉書房)B6判函附 角背 164頁 帯附
装幀:塚本邦雄 定価350円
本文組:3首/頁(1首2行 20字/行)
第4歌集『水銀傳説』を初めて手にしたのは,大阪市の古書店「浪速書林」が発行する「浪速書林古書目録」から注文したものだった。
目録には「ペン書き署名・極美」の記載もあったし,古書価も手頃な設定だった。
実際には帯の背の「オレンジ」が微妙に褪せていて,函にわずかな「ヤレ」が見られたが,年代を考えると「美本」の部類であった。
もしかするともう少し状態のよい『水銀傳説』に出会えるかも知れないと思いながら数年が過ぎ,画像の歌集に出会ったのである。
画像の歌集は,東京都の「石神井書林」が発行する「石神井書林古書目録」から入手したものである。
私が手にした2冊目の『水銀傳説』ということになる。
この『水銀傳説』は,おそらく「未読本」状態で保管されていたと思われる。
函・帯はもちろん,本冊のセロハンカバーにまで痛みのない「美本」で,目録には「極美」との記載があった。
塚本邦雄の初期の歌集は,歌の特異性からか「読まれた」物が多く,「美本」状態の物が古書目録に登場することは稀である。
橘に青銅の果はきざしつつ死後のくにの夏のはじめ 『水銀傳説』所収
万年筆による署名は当時のものと思われるが,墨筆の歌は後年の筆であろう。
見開きいっぱいに書かれた歌が力強い。
目録の古書価も手頃な設定だったので,即座に注文の電話を掛けた記憶がある。
今までのところ,私が手にした中では一番状態の良い『水銀傳説』である。
|
|
|