今のようにインターネットが普及していなかった頃,探求の古書を手に入れるためには,古書店が頒布する「古書目録」から注文するか,直接古書店を巡るという手段しかなかった。
「日本の古本屋」に代表される古書のネット通販サイトなどなかったし,そのそも古書をネットから注文する時代が来ようとは思ってもいなかった。
当時,古書店巡りに威力を発揮したのが「日本の古本屋地図」である。
全国の古書店の蒐集ジャンル,営業時間,地図,電話番号などの情報が都道府県別に分類されて掲載された本である。
この本を片手に,休日ともなれば近隣の都道府県の古書店を巡ったものだ。
今思えば随分効率の悪いやり方だが,それでも訪ねた古書店の主人と古書についての話をしたり,いろいろな情報を聞いたりと,それはそれで楽しかったし,交通費を払ってまで古書店を訪れる価値はあった。
古書に限らずだが,ひと言も会話を交わさずパソコンを操作するだけで商品を買うことが可能な時代になった。
それとともに街から古書店は姿を消していった。