酒呑み親父のよもやま噺

探求心旺盛な酒呑み親父の随想録

城市郎 『初版本』 現代文学書百科(桃源選書)

城市郎 『初版本』 現代文学書百科(桃源選書)

桃源社 昭和46年9月25日発行 B6版 カバー帯附
現代文学書百科(桃源選書)

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初版本の蒐集家に「帯」への注目を促した名著である。

それまで,専門店や蒐集家の一部では注目されていた帯であったが,ほとんどの蒐集家は帯に関心を持っていなかった。

この書籍は,著者が蒐集した芥川賞作家や有名作家の初版本を中心に解説したものなのだが,その内容の大部分が,本の解説よりも帯の紹介に費やされているのだ。

「帯付」こそが「完本」であるという感覚を初版本の蒐集家の間に定着させたことは,この本の功績のひとつだと言えよう。

さらに,発行年が昭和46年ということから『初版本』の中で紹介された本は,今ではその書影を確認することさえ困難なものが殆どなのである。
つまり,お宝映像満載の「図鑑」として見ることができる点にも価値がある。

芥川賞直木賞」を蒐集していた時期があった。
もちろん第一回芥川賞『蒼氓』石川達三著,第一回直木賞『鶴八鶴次郎』川口松太郎著から蒐集できるはずもないので,私が生まれた年の受賞作からをターゲットにしていた。

やはりその時こだわったのが本の美醜は勿論「元帯」が残っているかどうかという点であった。
その時蒐集した一連の本は今手許にはない。

バイブルのように蒐集の拠り所にした城市郎著『初版本』が,何故か2冊残っているのみである。