祖父の代から商売をしていた関係で,子供のころ家には福助人形があった。
裃姿で末広を腰にさした福助人形は縁起物で古くから客を呼び寄せる御利益があると言われていたようで,昔はたいていの商店にこの人形が置いてあった。
その時にはすでに店の奥に追いやられ,物置の棚の隅に置かれた状態だった。
随分古びた福助人形で所々色が剥げていた。
縁起物というより,むしろ不気味な雰囲気を醸し出していた。
夜になるとその福助人形が怖くて,走って前を通り過ぎていたという記憶がある。
お目にかからなくなって久しいものの一つである。
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